あさひ学園 - Asahi Gakuen文科省・外務省支援
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あさひ学園便り

「危機意識を持つ」「日頃から備える」ために

発行:
第450号    2024年2月3日
著者:
あさひ学園校長 西 克夫

 コロナ禍以前の賑わいが戻り2024年を迎えましたが、その気分を一転させる大きな悲しいニュースが日本から送られてきました。元日の夕方、能登半島地震が起き多くの尊い命が失われ、それ以降も甚大な被害状況が確認され心が痛むばかりでした。遠く離れたこの地からも、哀悼の意 「人間の死に対して共に悲しむ思い」を抱き、表したいと切に思います。

 

 また、今回の地震の報道を見て、私は13年前の東日本大震災のことを思い出しました。あの時の教訓が生かされたと願いたいところですが、多くの死者・行方不明者が出てしまったことは残念でなりません。

 

 そんな中、過去の経験や日頃の備えが生かされたと思う事例が二つありました。一つは地震直後の NHK のテレビ放送です。「『ここは大丈夫だ』と思うのは危険です。情報を待って逃げ遅れないで下さい!」「可能な限り高いところへ逃げること!」「今すぐ避難!今すぐ避難!東日本大震災を思い出して下さい!」「一度逃げたら途中で引き返さないでください!」とアナウンサーが強い口調でこのように繰り返し、被災地の人々に迅速な避難を促しました。その表現は「絶叫」とも受け取れるようなもので、日頃冷静に情報を伝えているアナウンサーの非常時の対応に、状況の深刻さを感じ取った人も多くいたとのことです。アナウンサーがそのように伝える理由は「『自分だけは大丈夫』『この地域は大丈夫』という思い込みや、『正常化の偏見』などを打ち破って避難してもらうには、東日本大震災のことを思い出してもらうのが効果的」という考えからだということです。このような異例とも言えるアナウンス、NHK アナの「絶叫」は、過去の震災報道の検証と反省が活かされたものだといえます。

 

 もう一つは、地震翌日に起きた日航機と海上保安庁の航空機が衝突するという大きな事故の際、残念ながら海上保安庁の乗務員5名の命は守れませんでしたが、日航機の乗客・乗員379名が全員無事であったということです。この件についてはアメリカでも話題となり、事故直後から「奇跡」と称賛する声が相次ぎました。しかし、このような避難ができたのは、決して奇跡ではなく、日本航空では年1回、事故発生から機内の脱出口の半分以下を使って90秒以内に全員が脱出できるようにする「90秒ルール」の訓練を行ってきたこと、つまり日ごろの訓練の賜物だということです。併せて、乗客が乗務員の指示に従い、勝手に立って手荷物を取る等の行動がなかったことも要因だったそうです。事故発生から18分で避難完了、生死を分けたのは乗務員の訓練による冷静さと乗客のマナーの良さでした。

 

 これら二つの事案から学ぶべき教訓は、「危機意識を持つ」「日頃から備える」ことではないでしょうか。本日、あさひ学園では不審者の侵入によるロックダウンに対する避難訓練を行います。子供たちには実際の危機を想定して、当事者意識をもって実施しないと単なるイベントになってしまい、いざという時に安全を確保できないことを確認します。ご家庭でも在宅時や外出時に危険な状況が起こりうること、そしてそのような時にどのように避難するのか等、話し合いながら「自分の命は、まず自分で守ること」として、予め備えるようにお願いします。併せて、緊急時には自分勝手な行動が命取りになるばかりでなく、他人の命をも奪いかねないこと、そのために日頃から自分の行動に責任を持ち、冷静にマナーを守って生活する必要性を意識させることが大切です。

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