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あさひ学園便り

ナナメの関係となる「第三の大人」の存在

発行:
第445号    2023年9月2日
著者:
あさひ学園校長 西 克夫

 子どもにとって親・教師との関係は「タテの関係」、同世代の友だち同志の関係は「ヨコの関係」といえます。

 「タテの関係」は基本的に上下がはっきりしているので、子どもはしぶしぶ従うか、反発するかの二者択一になりがちです。会話なども必要以上のやり取りがなく、コミュニケーション能力を鍛えるという点では、多くを期待できません。

 「ヨコの関係」では、興味のあることやたわいのないことをおしゃべりしたり、一緒に遊んだりする気軽な関係です。好きなことや悩みなどの相談をすることもありますが、会話はチャットのような独り言の応酬になりがちです。「昨日、〇〇の勉強をした」と友だちが言うと「私は○○をやった」という自分のやったことや感じたことを独り言のようにつぶやくような 会話になりがちです。これは、相手に深入りせずに仲良し関係を続けるにはいいかもしれませんが、コミュニケーション能力を高めることにはつながらないでしょう。

 

 現在、少子化・多忙化・家庭や社会の変化によって、人間関係づくりが下手な子どもが増加しています。コミュニケーションを上手に取りながら、感情を交流させて、周りの人と協力して活動する力などが不足しています。また、礼儀やマナーなど、「当たり前なこと」を学ぶ機会も限られています。なぜなら、昔は子どもたちの周りには良いモデルとなる大人の存在や親・教師以外に信頼できる「第三の大人」(近所や友達のおじさんやおばさん、祖父母等)とのかかわりが多くありました。親や教師という「タテの関係」でもなく、友だち同士の「ヨコの関係」でない、「ナナメの関係」となる世代を超えた先輩との交流です。親や教師とは異なり、ワンクッションをおいた立場で、子どもの心に寄り添ったり、厳しく叱ってくれたりする「第三の大人」(他人)の存在は重要でした。

コミュニケーション能力を伸ばすという面でも、よく知っている親・教師・友だちと違うので、相手の情報を想像して会話しないと理解することができません。どういう切り口で会話をして、関係を結ぶかを試行錯誤せざるをえないので、自然とコミュニケーション能力を向上させる機会になります。

 

 本校では、子どもたちにとって父母の会の安全・図書当番やCSとしてボランティア活動をしてくれている皆さんが、まさに「第三の大人」としての貴重な存在になります。

「○○ちゃんのお母さんがトイレまでついてきてくれて、お話ができた」

「図書館で○○君のお父さんからおもしろそうな本を紹介してもらった」

「休み時間に友だちとふざけすぎてしまい、○○さんのお母さんに注意された」等

 普段あまり接していない「第三の大人」からの声かけや会話などは、子どもにとって印象深く残ります。子どももそんな大人との豊かな関係を形成しようとすることで、コミュニケーション能力を高めようとします。もし、ほめてもらったり、なぐさめてもらったりしたならば、自己肯定感が満たされることにちがいありません。

 「自分の子どもだけでも大変なのに、人様の子どもまで・・・」と思っている方もいらっしゃると思いますが、家で見せない自分の子どもの意外な面を知る機会にもなります。また、自分の子どもも第三の大人から、いろいろな支援を受けて成長しています。

 今、子どもたちが抱える課題は多種多様ですが、学校と家庭で子どもたちを温かく見守りながら、将来を見据えた教育を心がけていきましょう。「第三の大人」の存在としてもお力添えを、どうぞよろしくお願いい たします。

 

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