あさひ学園 - Asahi Gakuen文科省・外務省支援
ロサンゼルス補習授業校

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卒業生・同窓生便り

第五十七回 神谷唯さん

神谷唯さん略歴
幼稚園〜中学3年生まで あさひ学園トーランス校に通う

2006年6月 South High School卒業
El Camino CollegeとSanta Monica Community College入学
(Transfer Studies専攻)
2008年9月 University of California Los Angeles (UCLA)入学
2010年6月 UCLAを卒業(Sociology専攻)
Marubeni Aerospace America Corporationへ入社
2014年2月 転職のため渡日
佐渡島を拠点にしている「太鼓芸能集団 鼓童」の制作として新しいキャリアをスタート
2017年4月 フリーランスに転職
アーツマネージメント&コーディネーター

あさひ学園で培われた多様性なマインド

簡単な自己紹介をお願いします

 神谷唯(旧姓:河本)です。一歳の頃に父の仕事の都合の為、家族でアメリカに移住しました。トーランスという町はさまざまな日本企業のアメリカ支社が置かれているのであさひ学園はもちろんのこと、日系マーケットや本屋さんなどさまざまな点で「バイリンガル」として何不自由なく育ったと実感しています。 あさひ学園を卒業後、現地校の部活に明け暮れた高校生活を送り、その後コミュニティーカレッジで単位をとってUCLAへ編入しました。それまで「too Japanese」な自分は周りの友達に馴染めないというコンプレックスもありましたが、大学を通して「Japanese American(日系アメリカ人)」というアイデンティティに心地よさを感じました。今ではアメリカ市民権を持っていますが、当時の自分はグリーンカードを持っていた「日本生まれ、アメリカ育ち」だったので、どっち付かずのカルチャーになんだか違和感を感じていましたが、大学で見つけたこの「日系アメリカ人」の自分が、一番「自分らしくいられる姿」だと今でも感じています。

 

【ドイツ・ハンブルクで開催された「ヨーロッパ太鼓カンファレンス」(2019) では様々な言語が飛び交う中、皆で和太鼓を打ちました。】

 

 とりわけ衝撃だったのが大学の和太鼓部との出会いです(特にカリフォルニアの大学ではポピュラーな部活です)。今まで「too Japanese」は正直ダサい!と感じてしまっていたのですが、和太鼓の演奏は力強く、一音一音が心臓の奥まで突き抜けるように響いたのを思い出します。その後 入部も叶い、大学生活は勉強、部活、バイト、そして、インターンシップで埋め尽くされました。 大学を卒業後、航空系の商社に勤めながら和太鼓は続けていたのですが、ふと、子供が「いつかプロのサッカー選手になりたい!」と夢を持つ気持ちと同じで、好きなことを仕事にするのはどういった気持ちだろう、という興味にそそられ、気づいたら人生で初めてロサンゼルスを離れ、日本列島の西にある離島へ引っ越すこととなりました。佐渡島ではプロの和太鼓集団の制作スタッフとして海外ツアーを周り、世界各国の劇場やステージでの演奏を届けています。今はフリーランスに切り替えましたが、この仕事は続けています。 和太鼓の舞台以外にも、最近では映画や国際イベント、さまざまな団体などを通して日本と世界の架け橋になるような仕事を心がけています。

 

【東京で初めて開催されたAnime Awards 2023は世界中のアニメファンの注目を集めました。】

 

あさひ学園での勉強や生活について、思い出深いことはなんですか?

 あさひ学園では現地校以外での宿題もあるのでついていくのに必死でしたが、土曜日の授業でしか会えない友達と過ごす時間を何よりも楽しみにしていたことを強く記憶しています。あさひ学園のクラスメイトや仲間は日本語でも英語でも話せる間柄で、自分が一番心地よいと思える存在でした。 アメリカで育っているのにもかかわらず、日本の数学の計算方法や、漢字の読み書き、科学や社会、歴史の出来事などを日英で理解できること、そして運動会の大玉転がしや学校の集会での「前ならえ」など、「日本での学校あるある」の記憶があるということは側から見たらすこし不思議かもしれませんが、私たち、あさひ学園の生徒にとっては「あたりまえ」でした。

 

あさひ学園で学ばれたことが、今のお仕事に何らかの形で結びついていますか?

 週に一度だけのあさひ学園ではありましたが、幼稚部から中学3年生までの10年間通うと、自分の中に染み付く「文化」があります。それは日本の「文化」とは言い切れないかも知れないけれど、多種多様なロサンゼルスの中だからこそ、私の中で生まれる「文化」です。

 

【2年に一度の「鼓童」北米ツアーで訪れる地元LAのWalt Disney Concert Hallは毎回特別な気持ちになります。新潟県の佐渡島では各集落ごとに「鬼太鼓(おんでこ)」という芸能があり、ここのコミュニティーにも魅了されます。】

 

 私は今、主に「和太鼓」の仕事をしています。太鼓と言えば、盆踊りだったりお祭りだったり、ベリージャパニーズな印象が一般的には強いかと思いますが、実はアメリカ各地では第二次世界大戦後の日系アメリカ人のアイデンティティの象徴であったり、ブラジルでは移民の歴史と深い繋がりがあったり、ヨーロッパ各地やアジア大陸、アフリカやオセアニア各地でもさまざまな理由で日本の「和太鼓」を楽しむ人が大勢います。 あさひ学園を通して多様なマインドを培われた私だからこそ、このダイバースな世界の太鼓コミュニティーの力になれると信じて、今もアートマネージメントの仕事を続けています。

 

【2022年の11月にはオーストラリアのBegaという小さな町で太鼓合宿を行いました。】

 

あさひ学園在校の後輩へのメッセージをお願いいたします

 在校生の皆様、現地校とあさひ学園の学業の両立はとても大変だと思います。ここまで通わせてくれたご両親への感謝を忘れず、少し無理をしてでも最後まで通ってみてください。卒業式は達成感に溢れますし、かけがえのない思い出が出来ます。そしてその経験がきっとさまざまな形で未来の皆さんを救ってくれるに違いありません。頑張れば報われる、何かに挑戦し続けることを忘れないでください。

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