あさひ学園 - Asahi Gakuen文科省・外務省支援
ロサンゼルス補習授業校

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卒業生・同窓生便り

第三十八回 武井 寿乃 さん

卒業生・同窓生便りの第38回は、ジュエリーデザイナー、短期大学の講師、そして芸術家としてご活躍の武井寿乃(ひさの)さんからです。武井さんは、小学校1年から中学校2年まであさひ学園に通われました。在学中の金曜日を“魔の金曜日"と呼ぶほど大変だったと振り返えりながらも、今ではあきらめずに通い続けたことを感謝し、二つの言語を勉強していた過去があるからこそ、現在、複数の仕事を同時にこなすこともできるのだと語られています。二つの言語を扱うことにより視野が広がり、チャレンジする選択肢も増えるのだとも語られています。 在校生の皆さんには、日本語の勉強を続けるよう、続けていれば自分の力になり、つらいことに直面してもやり遂げることが出来るようになるのだとメッセージをくださいました。 武井さんにとっての最高の誉め言葉は、「アメリカに長いのに、きれいな日本語を話されますね。」と言われることだそうです。

最後の課題

私の兄があさひ学園へ通い始めた頃私はまだ幼稚園生でした。土曜日の朝車で両親が彼を送るのにくっついて行き楽しそうだなぁ、私も早く通いたいなぁ、とうらやましく見送っていました。新学期に入り、私もようやく一年生として入学し念願のあさひ学園の生徒となりました。新しくお友達もできてうきうきしていたのもつかの間、二つの言語を同時に勉強することの大変さに気づかされました。私はあさひ学園を1992年の中学二年生まで通っていました。

私が今こうして日本語で文章を書き、読み、流暢に話すことができるのはあさひ学園と母のおかげです。あさひ学園に一年生から入学し小学五年生まであさひ学園の宿題をすべて指導してくれたのは母でした。そして私が中学二年まであさひに通い中学三年で受験し 東京学芸大学付属高校大泉校舎へ入学できたのもこの基盤があったからです。

あさひの宿題の量は膨大でした。日本の学校のカリキュラムに追いつくために毎週山のような宿題がだされ、大多数の生徒が終わらせられないまま通う中、母は毎週金曜日の夕方から私をダイニングテーブルに座らせ終わるまで眠らせてくれませんでした。毎週行われる漢字テストの練習は毎朝現地校に通う前に一通り書いてからというのが習慣となりました。しだいに私は魔の金曜日と呼ぶようになりました。もちろん金曜日の夜から現地校の友達とお泊り会はだめ、土曜日になにかのイベントがあってもキャンセル、めったにあさひ学園を休むことはありませんでした。遊びたい気持ちで反発することは多々ありましたが日本語を学ぶ大切さをそのつど母が根気よく教えてくれました。あきらめず通い続けたことを今はとても感謝しています。あさひ学園での思い出はつらい宿題や拘束された週末ばかりではありません。小学六年生の頃に仲が良かった友達との友情は今も十五年以上続いています。一週間に一度他校の現地校に通う日本人の友達と遊んだドッジボールや運動会はいまでもほほえましい思い出です。

あさひ学園で日本語を学んでいくうちにバイリンガルであることが当たり前になっていきました。そんななか、日本の高校へ通い始め自分の興味は芸術にあることを認識し、アメリカの高校に戻った際に出会ったジュエリーのクラスで作ることにひかれ大学の専攻科目となりました。アメリカの大学で彫金・ジュエリー科を卒業後、大学院へ進みその経験を生かし、ジュエリー関係の仕事についていますが色々な場面で日本語を使う機会があります。特にプライベートでは日本人の友人との交友関係を大切にしています。

私は現在ジュエリーデザイナー、短期大学のジュエリークラスの講師と芸術家として3つの仕事をしています。これらの職業は一見日本語とは無関係に見えがちですが日本語はさまざまな形で活躍しています。ジュエリーデザイナーとしての仕事では真珠を扱うので神戸のアコヤ真珠の業者の方と話すことがあります。芸術家としては日本の雑誌などに作品を載せることもあるので日本語で仕事をします。そしてもっとも関連しているのは一度に二つの言語を勉強していた過去があるからこそ現在複数の仕事を同時にこなしていけることです。

私にとって最高の誉め言葉は「アメリカに長いのにきれいな日本語を話されますね。」と言われることです。私の将来の抱負はアメリカに住む日本人アーティストとして世界中に作品を出展することと講師あるいは教授としてジュエリーを教え続けることです。そして近い将来自分が母になったときにきれいな日本語を話せるように子育てをしようと思っています。日本語を毎日使う職業につかなくとも二つの言語を扱えるということは物事を多方面から見ることができ、視野も広がります。二つの国の言葉を話せることができるのならほかの国の言葉を学ぶのもチャレンジできるでしょう。そうすることにより選択肢が増えます。

私が在校生の皆さんにメッセージを送るとしたら、「日本語の勉強を続けてください。」です。続けていれば自分の力になります。今がとてもつらくても大人になったときに何か つらいことに直面してもきっとやり遂げることができます。私は日本語で話したり、テレビ番組をみたり本を読むのが大好きです。アメリカで生活し、仕事ではほとんど英語ですが息抜きに日本食レストランで日本人の友人と過ごすひと時は私にとても良いバランスをもたらせてくれます。

この作文はあさひ学園が私にあたえてくれた最後の課題だと思います。

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