あさひ学園 - Asahi Gakuen文科省・外務省支援
ロサンゼルス補習授業校

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卒業生・同窓生便り

第三十四回 河野 一樹 さん

卒業生・同窓生便りの第34回はフリーランスのITコンサルタント/プロジェクトマネジャーである河野一樹さんからです。あさひ学園には中2から中3までパサデナ校に通いました。中学1年まで日本にいたため、あさひでの勉強や生活には困ることはなく、運動会では体操隊長として、"高いところ"から眺める体験をされました。日本に帰国後は、編入試験で中高一貫教育の私立学校へ戻り、大学は慶応大学理工学部でナノテクノロジーを専攻しました。大学卒業後はITコンサルタントを目指して、システムインテグレーション会社に就職、コンサルティング部やシステムインテグレーション部を経験しました。そうした仕事を通じて、プログラムの設計・作成方法およびシステムを構築するプロジェクトの管理手法を学んだ後、自分の会社を立ち上げる経験をされ、今はフリーランスとして仕事を進められています。在校生の皆さんには、あさひと現地校で異なる言語や文化を学べる現在の機会を十分生かして、今後一層ボーダレス化する世界の中で、外国の人たちをより深く理解する役割を担ってもらいたいことを伝えてきています。

自身の強みを知り、最大限に生かす!

自己紹介

みなさん初めまして。1991年半ばから1992年いっぱいの一年半、パサディナ校に通っていた河野一樹と申します。あさひ歴は他の人達と比べてかなり短い部類に属すると思います。 中学二年生までは日本で暮らし、父の仕事でSan Marinoに移り住んだのは1991年の6月でした。当時中学二年生になったばかりでしたが、「どうせ英語はわからないから高校も中学も一緒」という父の判断でhigh schoolのサマースクールに通い、9月からSan Marino High Schoolの9th gradeに入りました。卒業まではLAに留まるつもりでしたがその一年半後には急遽帰国することとなり、結局現地校もあさひも卒業せずに日本に戻り、元々通っていた中高一貫の私立校に編入してからは一般の日本人高校生と同じ暮らしを送ってきました。 在米期間が短かったので帰国子女認定を受けることができず、日本の勉強からも(特に数学が)遅れをとっていたので帰国後の数ヶ月は苦労した記憶があります。ただしあさひで学習したレベルは日本の学校と比べてもひけを取るものではなく、既習内容については支障なく学生生活を過ごすことができました。

現在の仕事の内容

現在はフリーランスのITコンサルタント/プロジェクトマネージャーとして、自動車メーカー・半導体メーカー・ケータイコンテンツ制作会社など様々なお客様と一緒に仕事をしています。普段みなさんがよく使われるポータルサイトのGoogle/Yahoo!やメールソフト、家計簿ソフトのような仕組み(システム)を企画、設計して作り上げる仕事です。 基本的には企業の業務効率化の為にシステムを導入するわけですから、本当にシステムが必要かどうか投資対効果で考えたり、システムを作るのと同時に効率化の観点で仕事のやり方も変える提案を行ったりもします。昨今は日本国内で全てシステムを作り上げることはほとんどなく、設計書まで作り上げたら、あとは中国やインドにいるプログラマーの人達に作ってもらうことが多いです。当然現地とのやり取りは英語です。 またグローバルに事業展開されているお客様が多いので、システム利用者も北米、欧州、アジア、南米と世界中に散らばっており、実に様々な国の人達と打ち合わせを行って、どのような仕組みがほしいのかをインタビューし、それを限られたスケジュールと予算の中でいかに要求に応えられるか、を示すのが腕の見せ所です。 仕事が一段落しお客様が変わることにより様々な業界の仕事に触れる機会があるので、非常にエキサイティングな仕事だと思います。

現在の仕事を選んだ理由

学生時代は漠然と「コンサルタントってかっこよさそうだな」というあこがれからコンサルタントを目指しました。また学生時代から自分でパソコンを組み立てたり、インターネット黎明期からメール・ネットに親しんでいたので、システムを使って効率よく物事を成し遂げることに快感を感じており、仕事をするならIT関係と決めていました。 「IT関係のコンサルタント」というキーワードで就職活動を行い、念願かなってシステムインテグレーション会社のコンサルティング部に配属されました。そこでコンサルティングの基礎をたたき込まれてからシステムインテグレーションの部署に異動し、プログラムを設計・作る仕事をまず覚え、次にその前段となる要件定義(どういう仕組みがほしい/必要なのかを決めること)やシステムを作るプロジェクトが円滑に進むようマネジメントする手法を学び、数度の転職を経て現在に至っています。 フリーランスという働き方を選択したのは、そのほうが仕事内容も場所もやり方も全て自分で決められるからです。また実力と人脈があればサラリーマンとして同等の仕事をするよりも収入が格段に上がります。ただし仕事が入ってこない、お客さんから契約を打ち切られてしまう、誰からも仕事を教えてもらえないといったデメリットもあります。総合的に判断して私の場合はフリーランスという働き方を選択しました。

大学や大学院で専攻科目の選択理由

覚えることが少なくてすみ、考え抜くと美しい答えが出る数学と物理が好きだったので、得意科目で理系に進みました。大学で何をやりたいという具体的な目標は持っていなかったのですが、父の薦めもあって慶應義塾大学の理工学部に入学しナノテクノロジーを専攻していました。今でこそ当たり前となった有機ELディスプレイやにおいセンサーなどの基礎研究を行っていました。当時は最先端の研究であり学会で発表させてもらう機会が多く、人々の暮らしの役に立つし何より目立つことができそうだという軽い気持ちも手伝って日々研究に没頭していました。今でも自分の発表した論文はインターネット上で見つけることができます。

あさひでの生活

一番印象に残っているのは運動会です。日本から来たばかりだからラジオ体操知ってるんじゃない?という理由で体操隊長に任命されて、全校生徒の前で体操を披露しました。私は非常に体が硬いのでまさか体操を教える側にまわるなど思ってもいませんでしたが、みんなが自分をまねて体操をしてくれたのがとても嬉しく気持ちよく感じたことを覚えています。校長先生など偉い人がよく「高いところから失礼します」とおっしゃいますが、その「高いところ」からどんな風景が見えるのかを初めて知ったのはあさひでの生活でした。 勉強については日本の中高一貫教育の私立から来たので難しい・つらいといったことはありませんでしたが、周りを見渡すと長い間アメリカに住んでいながら日本の授業もちゃんとこなせている友達が多く「本当に週1回しか日本の勉強していないの?」と思ってしまう頭の良い人がたくさんいたのには驚きました。彼らは今でも良い友達で定期的に連絡を取り合っています。みなさんも友達は大事にして下さいね。 それから、休み時間にはしゃいでいてズボンが破れてパンツ丸見えなった事件を文集に書かれてしまったのは恥ずかしくもオイシイ思い出です。

将来の抱負

以前、一度知人と起業し2年ほど自分で会社経営をしていました。諸般の事情により止めることになりましたが、フリーランスとして個人で仕事をするのと会社を興して仕事をするのでは、こなせる仕事の量が大きく変わってきます。どちらが良いということはないのですが、会社を興して仕事をしたほうが私一個人としての社会への貢献度は高められると私は思います。 人から感謝されるというのは本当に嬉しいもので、私は欲張りなのでお客さんにはもっと喜んでいただきたいですし、もっと稼ぎたいとも考えています。どんな仕事にせよお客さんに喜ばれることをして対価としてお金をいただくわけですから、たくさん喜ばれるためにも会社(事業)を興して社会により貢献したいと考えています。

あさひの在校生へのメッセージ

アメリカと日本は異なる歴史を持っており、その歴史の中で育まれた文化とモノの考え方も異なります。みなさんの強みは、この「違い」があることを実体験を通して感じ、知っていることだと思います。 ボーダーレス化が進んだとはいえ、まだまだ「外国人」を「ガイジン=異質な人達」と感じている日本人も多く、仕事の海外の人と接する際に戸惑う人が周りにたくさんいます。日本では皆同じような考え方をしているのに、外国の人とはまるで考え方が違うといったケースがあるんですね。こういった時に海外で生活していた経験があると、相手が何を言わんとしているのかがわかったり、相手国にあわせて仕事の進め方を変えるといった柔軟な対応が取れるようになります。アメリカで永住する人達にとっても、少なくとも現地校でしか勉強したことのない人達よりもあさひでの経験を通して日本のことを知っているわけですから、両国の架け橋になれるのではないでしょうか。 21世紀になってからも世界各国で紛争が絶えることがありません。歴史・宗教・経済と要因は様々ですが、根幹は異質なモノを受け入れないところに端を発していると思います。みなさんにはアメリカ、日本だけでなく世界をぎくしゃくさせることのない潤滑油のような役割を果たすことのできるポテンシャルがあると私は信じております。みなさん、この強みを大いに活用し、未来を切り開いて下さい。

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