卒業生・同窓生便りの第14回は、成蹊大学の河内(旧姓は藤田)智子さんからです。 あさひには、お父さんの転勤で小学3年から小学6年生まで過ごされました。 渡米当時は、現地校の授業に苦しんだものの、英語力が身につくにつれ、日米の二つの文化を共有するあさひの友人たちとの間で強い絆ができたようです(第11回目の加藤さんもその一人です)。 帰国後、国際基督教大学の高校と大学へ進学、関心の強かった教育学を専攻しました。卒業後、米国系の金融機関に勤務、バイリンガル能力や異文化適応力を十分生かすことになりました。 しかし、5年間の勤務後、人を教える仕事への関心が再び高まったことや英語でのコミュニケーション能力の大切さを痛感、コロンビア大学の英語教育学修士プログラムに進学しました。 修士号取得後、日本に戻り、現在は成蹊大学で英語や異文化コミュニケーションの授業を教えています。 在校生の皆さんへは、あさひと現地校の勉強の両立は大変ですが、日米二つの言語や文化を身につけることは自分の将来の扉を開くものであり、是非頑張って欲しいと伝えてきています。
私は父の仕事の転勤で小学校三年生から六年生までをロサンゼルスで過ごし、あさひ学園のサンタモニカ校に通っていました。渡米当時は英語が話せず、現地校の授業には全くついていけなかったので、土曜日のあさひ学園で過ごすひとときは私にとってほっと一息つき、自信を取り戻すことのできる時間でした。その後英語力を身につけ、現地校の授業に慣れた後も、あさひ学園の友達とは日米二つの文化を共有する者同士の独特の絆で結ばれていたように思います。
平日は英語で現地校の友達と過ごし、土曜日は日本人の友達と日本の学校カリキュラムに基づいて勉強をするという経験は、子供ながらにあたかも二つの世界を行き来するかのようでしたが、当時はあまり違和感も持たずに自然に両世界を往来していました。今思うとそうした経験がその後の様々な環境への適応力を養ってくれたように思います。
小学校六年生で帰国した後は公立の中学へ入学、国際基督教大学高校を経て国際基督教大学へ進学しました。帰国当時は帰国子女へのいじめが社会問題化していましたが、意外とすんなりと日本の学校に馴染むことができたのはやはりあさひ学園で日本の学校の勉強はもちろん、日本文化に触れていたおかげだと思います。大学では、以前から興味のあった教育学を専攻し、英語教員の免許も取得しました。ただ、いずれ教育の道に進むにしても一度企業に就職して学校以外の社会生活も経験してみたいと思い、アメリカ系の金融機関の東京支店に就職しました。
金融機関で働いていた5年間のうち、前半は営業部所、後半は人事部で勤務しました。人事部では上司はオーストラリア人やアメリカ人でしたし、香港支店やシンガポール支店の同僚とも密に連携をとりながら英語で仕事を進めることが求められました。一方、日本人社員や業者とは日本語でやりとりをするので、まさにバイリンガルのスキルが必須の職場でした。金融機関での仕事は非常にスピード感があり、学ぶことが多い毎日でしたが、やはりもっと直接的に人に教える仕事に就きたい、と考えるようになりました。また、職場での経験から、これからの国際社会で日本人が活躍するためには英語によるコミュニケーション能力が不可欠であると痛感し、自分の得意分野である英語を生かして教育に携わろうと、退職を決意しました。そしてニューヨークのコロンビア大学大学院の英語教育学修士プログラムに進学しました。
大学院で修士号を取得後、再び日本に帰国し、現在は東京の成蹊大学で英語を教えています。よく「日本人は何年間も英語を勉強しているのに英語を話すことができない」と言われますが、実際には、大学に入学した段階で、英語の文法や語彙に関する知識はかなり多く身につけています。そこで、私の仕事はその「知識」をコミュニケーションという「手段」に応用していくための練習の場を提供すると同時に、英語の楽しさや、英語が使えるとどんなに多くの世界が広がるかということを伝えていくことだと思っています。
また、「異文化コミュニケーション」という専門授業も担当しています。この授業では、異なる文化的背景を持つ人々とよりよい関係を築くためにはどうすればよいか、ということを話し合います。一番大切なことは、物事を、自分の価値観のものさしだけで見るのではなく、様々な視点から見ることだと思います。
こうして振り返ると、私の今までの経験から言えることは、無駄な経験はない、ということです。ロサンゼルスに行ったこと、あさひ学園に通ったこと、日本の中学、高校、大学へ進学したこと、金融機関に勤めたこと、大学院に行ったこと、それらは全て私の現在につながっており、それぞれの場所で体験したこと、学んだこと、育んだ友情は私の血となり肉となっています。また、たとえその時は目的が分からなくても、目の前にあることを一生懸命やっていると、やがて道が開けてくる、ということも学びました。現地校では英語の勉強を、あさひ学園では日本の勉強を、大学や職場では両方の言語を使った勉強を一生懸命やった結果、やりたいことが見つかった時に大学院に進学することができたし、その経験を生かして今の職に就くこともできました。
高学年になるに連れ、現地校とあさひ学園の勉強を両立することは大変になってくると思います。また、日米二つの文化の間でアイデンティティーの葛藤を経験することもあると思います。けれども、二つの文化を自分の中に持つことができるということは、大変なギフトであると、いま心から思います。これから先みなさんがどのような道へ進むにしても、二つの文化、二つの言語を身につけることによってより多くの道への扉が開かれることは間違いないと思います。あさひ学園での経験をチャンスと捉え、是非がんばってみてください。
保護者の皆様。
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