あさひ学園便り

子どもの幸せと成長を支える「民主型の親」 

発行:
第468号    2025年10月4日
著者:
あさひ学園校長 西 克夫

 今回は、子どもの健やかな成長と幸福感に深く関わる「親の関わり方」についてご紹介いたします。


 カリフォルニア大学バークレー校の発達心理学者、ダイアナ・バウムリンド博士による研究「Baumrind’s Parental Typology」では、親のタイプは大きく 4 つに分類されています。第一は「民主型」の親、厳しさと寛容のバランスが取れており、子どもを尊重しながらも社会的なルールや責任をしっかりと教える姿勢が特徴です。第二は「独裁型」の親、厳しさが強く、命令や指示が中心で、子どもの意見を聞かずに従わせる傾向があります。第三は「寛容型」の親、過保護・過干渉になりやすく、ルールが曖昧で子どもに対して甘くなりがちです。第四は「放置型」の親、子育てへの関心が薄く、関わりが少ない状態です。

 

 この中で、子どもの幸福度や満足度が最も高いとされるのが「民主型の親」です。厳しさとは、子どもが社会の一員として責任ある行動を取れるよう導くこと、そして感情や行動をコントロールし、ルールを守る力を育てることです。一方、寛容とは、子どもをありのままに受け入れ、失敗や感情に寄り添う姿勢です。民主型の親は、この両方を大切にし、子どもの自己肯定感と自制心を育みます。

 

 しつけが必要なのは、健康と命を守るため、そして社会のルールを守るための二つだけです。それ以外の場面では、「これは本当に必要な指導か」「親の都合ではないか」と自問することが大切です。民主型の親は、しつけの場面で「説明」を重視します。ご褒美や叱責に頼るのではなく、子ども自身が納得し、自律的に行動できるようになることを目指します。時間と根気が必要ですが、子どもが自分で考え、判断し、行動する力を育てる最も効果的な方法です。

 

 叱ることは一つのしつけの方法ですが、恐怖や不安を感じると、脳の「扁桃体」が活性化し、学習や思考を司る「前頭前野」の働きが低下することが分かっています。つまり、感情的な叱責は子どもの学びの妨げになる可能性があるのです。どうしても叱る必要がある場合は、「行為」と「人格」を分けて伝えることが重要です。「あなたは悪い子」ではなく、「その行為はよくない」と伝えることで、子どもが自己否定に陥るのを防ぎます。また、なぜその行為が問題なのかを論理的に説明し、子どもの気持ちにも耳を傾けることが、民主型の親の姿勢です。


 民主型の親の具体的な関わり方としては、まず「厳しさ」の面では、子どもにできる最高を期待し、主体的な行動を促すことが挙げられます。ルールの必要性を説明し、共に実践する姿勢も重要です。ルール違反にはきちんと向き合い、親自身も誤った行動に対して謝ることで、子どもに誠実な姿勢を示します。

 

 一方で「寛容」の面では、子どもの「好き」を認め、応援することが大切です。良いところを見つけて伝え、気持ちの表現を尊重することで、子どもは安心して自分を表現できるようになります。ルール違反には説明で対応しますが、例外を認める柔軟さを持つことも必要です。子どもの気持ちに寄り添い、意見の違いにも耳を傾けることで、親子の信頼関係が深まります。

 

 教育同様、子育てに正解はありませんが、子どもと向き合う姿勢には「より良い選択」があります。親としての関わり方が、子どもの未来を大きく左右することを改めて意識し、日々の関わりを大切にしていきましょう。

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