あさひ学園 - Asahi Gakuen文科省・外務省支援
ロサンゼルス補習授業校

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卒業生・同窓生便り

第五十八回 加藤直太郎さん

加藤直太郎さん略歴

2014年3月 あさひ学園トーランス校中学部卒業
2016年3月 あさひ学園サンタモニカ校高等部卒業
2017年6月 North High School卒業
2021年 Brown University卒業 教育学専攻
2022年 Brown University大学院 MATプログラム 高校数学教育
教員免許取得      
2022年 Hope Learning Centerをロミータにて開業 現在に至る

「楽しい」が一番大事!

あさひ学園トーランス校小学部・中学部、サンタモニカ校高等部をご卒業、Brown University大学院で教員免許を取得されたのち、ロミータ市でHope Learning Centerを開業。現在、ディレクターとして活躍中の加藤直太郎さんにお話を伺いました。

 

あさひ学園での思い出を教えてください

 私はアメリカで生まれ、小学1年から高等部卒業の11年間あさひ学園に通いましたが、一度も「あさひを辞めたい」と思った記憶がありません。本当なんです。ふり返ると…

  • 先生が授業の終わりに話してくれた「怖い話」。
  • 学校のキャンパスを全部使って思いっきり走った昼休みの鬼ごっこ。
  • 足がしびれるまでやった運動会の「南中ソーラン」の練習。

 授業も、休み時間も、運動会も、弁論大会も、どれも楽しい記憶ばかりです。

 もちろん、辛かったことを全部忘れてしまっただけかもしれません(笑)。大変だったこともいっぱいあったはずです。宿題は毎週たくさん出てたし、先生に説教されたことも何度もありました。特に中学部・高等部に上がってからは、現地校のスポーツや活動との両立で目が回るほど忙しかった。私は高校時代、陸上部に入っていたので、早朝に10キロを死ぬ気で走った後、息をつく間もなく車に乗って、そのままあさひに直行、ということもよくありました。

 でも、10年近く経った今、私の記憶に残っているのは「大変」「行きたくない」という気持ちではなく、「楽しい」という感情と、この文章を自力で書ける日本語力です。

現在、私は130人以上の「アメリカで育つ日本人の子どもたち」の教育に携わっていますが、改めて、自分はとても恵まれていたんだなあと感じます。残念ながら、一定数の生徒にとって日本語補習校は、必ずしも楽しいところではないように思えたからです。

 特に日本に帰国する予定がなく「関心のやじるし」がアメリカに向いている生徒は、「補習校に行かなければいけない場所」という義務感で通っている人も少なくありません。

 

 

現在はどのような活動をされていますか

 私は「ホープラーニングセンター」という学習教室をトーランス校近くのロミータ市にて運営しています。2022年に開校し、もう少しで3年目に突入します。ホープではアフタースクール(学童保育)・現地校と補習校の宿題サポート・小中学生のためのサマーキャンプなど、さまざまな活動を行っていますが、中核にあるのは「日本にバックグラウンドを持つアメリカの子どもたちに『楽しい学び』を伝える」という目標です。

 例えば、「日本一周ぶらり旅」という7日間のウィンターキャンプを行いました。5〜12歳のアメリカ育ちの子どもたちに日本の各地方の特徴を知ってもらうのが、このキャンプの目的でした。米国育ちにとって、「ホッカイドウ」や「キンキチホウ」と聞いてもあまりピンとこないことが多いです。また、参加生徒には日本に一度も行ったことがない子や、日本語を嫌がり頑なに英語を使う子もいました。

 どうしたら、そんな子どもたちでも日本を好きになってもらえるだろう?色々考えた結果、私たちは、毎日違う地方に赴き、そこにちなんだ楽しいアクティビティをする「参加型・日本全国擬似旅行」を思いつきました。YouTubeで飛行機や新幹線の映像を流し、「到着」したら、工作やクッキングなどの活動を行います。東北地方で停車した日は、山形県の花笠を作り、四国地方ではうどん作りを体験し、北海道では南中ソーランを練習しました。10年前、あさひで学んだソーランを、今度は自分が教えることになるとは思いませんでした。 こちらのウィンターキャンプでは、南加福島県人会・佐々木光露三弦会・Namahage LA・獅子組LAなどの日系団体の方々をゲストとして招き、それぞれ地方の魅力を発信していただきました。その他にも、ホープのスタッフや生徒の保護者の方など、たくさんの人が貢献した結果、「楽しい」イベントづくしの7日間となりました。

 プログラムの最終日、ある10歳の女の子が教室の角にさりげなく置いておいた「都道府県パズル」を解こうとしていました。初日に頑なに英語を使っていた子の一人です。無邪気な表情で、彼女は7日間を思い出しながら、パズルを埋めていました。「楽しい」からこそ学びが深まるし、記憶に残るのです。「楽しい」が一番大事だということを伝えたいのです。

 

 

あさひ学園での体験を振り返られ、気づきから得られた学びはありますか

 ホープの活動を始めて気づきましたが、「楽しい」は当たり前ではありません。「楽しい」を作り出すのには、たくさんの人の力と時間が必要です。今ふり返ると、私があさひ学園を思う存分楽しめたのは、

  • 毎週お弁当を作り、時間どおり送り迎えをしてくれた親(11年間、一度も遅刻しませんでした)
  • 今でも交流がある、気の合う友達
  • アメリカ育ちでも理解できる授業を入念に準備していただいた先生方
  • ワクワクするイベントを企画していただいた父母の会のみなさま
  • 安心して学習できるように努める安全当番の保護者の方

たくさんの人の努力と工夫が土台にあったからこそ存在したのだと再認識しています。

 

現在はご自身で立ち上げられた教育機関でご活躍中ですが、補習校との関係をどうお考えですか

 「日本語補習校をライバル視しているか」と聞かれることがあります。それは絶対にありません。むしろ、ホープの新規生徒には、補習校に通ってもらうため、私にとってあさひ学園がどんなにためになったか・また自分の人生を豊かにしてきたかアピールするようにしています。

 例を挙げると、私が入学したブラウン大学の大図書館「ロックフェラー・ライブラリー」の3階には日本文学コーナーがありました。T校図書室の5倍は優に超えそうな蔵書数で、これほど多くの日本語の本を見たのは初めてでした。「これを全部読めるのか!」と驚きと感動で胸がいっぱいになったことを覚えています。中高生のときは、あまり日本の小説には興味がありませんでしたが、この日本文学コーナーとの出会いをきっかけに、20代になってから日本語の小説を読むようになりました。特に、村上春樹の『ダンス・ダンス・ダンス』と『色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年』は、大学時代の一番辛い時に心を支えてくれた大事な作品です。

 もっとわかりやすいところだと、ホープラーニングセンターのロゴは実はあさひの元クラスメイトに作成してもらっています。私がSM校高等部を卒業した時、卒業生は全員で5人でしたが、そのうちの一人の杉下拓海(すぎしたたくみ)さんは現在アーティストとして活躍しており、今でも交流があります。

 列挙し始めれば、キリがありません。 私が今、この仕事ができるのは、確実にあさひ学園のおかげです。

 

最後に、加藤さんの夢をおしえてください

 私の現在の夢は、ホープラーニングセンターを通して、日本人コミュニティの子どもたち、またその先にいるアメリカ中の児童と広く深く付き合い、「楽しい学び」を伝えることです。

アメリカで育つ日本人の先輩として、私と同じような子どもたちが、のびのびと成長できるように、また補習校に楽しく通えるように、潤滑油として今後も活躍できたら嬉しいです。

 

 

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