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あさひ学園便り

日本語と英語、二つの言語で学習すること

発行:
第475号    2026年5月2日
著者:
あさひ学園校長 桑原 嘉明

 アメリカという異国の地で、現地校での英語をベースとした学習と、あさひ学園での日本語による学習。この二つの環境を両立させていることは、お子様の脳の発達において、かけがえのない「贈り物」となります。そのメリットについて、大脳生理学の研究から報告されている三つの視点をご紹介します。


1. 脳の「実行機能」の強化
二つの言語を日常的に切り替えて使うことで、脳の「前頭前野」が高度に活性化されます。これにより、集中力や記憶力、そして状況に応じて柔軟に思考を切り替える「実行機能」が鍛えられます。これは単なる学習能力にとどまらず、将来の課題解決能力にも直結する力です。

 

2. 脳の構造的ネットワークの拡大
言語学習は、脳の神経細胞を結ぶ「白質」の密度を高めることが分かっています。特に、英語の論理的な構造と日本語の情緒的な表現の双方に触れることは、脳内に多様なネットワークを築き、多角的な視点で物事を捉える豊かな知性を育みます。

 

3. 生涯にわたる知的なレジリエンス
バイリンガルの脳は、加齢に伴う認知機能の低下を遅らせる「認知的予備能」が高いことも証明されています。幼少期に二つの言語を脳に刻むことは、一生涯にわたる知的な健康の土台を築くことでもあるのです。

 

 しかし、二言語学習は決して「魔法の杖」ではありません。時には語彙の発達に一時的な遅れが見られるなど、葛藤が生じることもあります。しかし、それは成長過程における「成長痛」のようなものです。長期的な視点に立てば、その葛藤こそが脳の成長を促す大きな価値となります。日々の「大変さ」を単なる苦労として片付けるのではなく、将来の自分を支える「知的な筋肉痛」として親子で共有することが、乗り越えるための大きな力になります。


 今、二つの言葉の間で揺れ動いている時間は、脳が一生懸命、世界を二倍に広げるための「素敵な橋」を架けている時間です。その橋が完成したとき、お子様の目には他の人には見えない景色が広がっているはずです。将来、大人になったとき、この時期の努力が多様な価値観を受け入れる「心の広さ」と、しなやかで「タフな脳」を作ってくれたことに気づく日が必ず来ます。バイリンガル教育において、私たち大人ができる最大のサポートは、挑戦しているお子様を認め、温かく見守る「心理
的な安全基地」であり続けることではないでしょうか。

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