声、顔、姿
新学期が始まりひと月が経ちました。子どもたちは、新しい先生や友達とも慣れ、熱心に勉強したり楽しく遊んだりしています。 放課後、校門に立ち、「今日も一日頑張ったね。ご苦労様」とねぎらいの気持ちを込めて、帰宅する子どもや保護者の皆さんと挨拶を交わしています。先日、元気な明るい声で進んで「さようなら」と挨拶をする子や、帽子を取ったりサングラスを外したりして「お世話になりました」と丁寧に挨拶をされる保護者の方々と挨拶を交わしている時、歌舞伎役者の鉄則といわれている、「一声、二顔、三姿」という言葉を思い出しました。 歌舞伎のことはよく分かりませんが、歌舞伎役者の演技は、声の使い方、顔の豊かな表情と隙のない立ち居振る舞いによって成り立っていることは理解できます。なぜ、この言葉を思い出したかと考えると、私の意識の中で歌舞伎役者と教師や親の姿をダブらせていたからだと思います。 「おはよう」「さようなら」と呼び掛けた声は、子どもに爽やかでやすらぎを感じさせているのだろうか。温かい愛情のある声をかけているのだろうか。自分が、心から明るい気持ちで相手と接しようとして声を出しているのだろうか。ひょっとして、無味乾燥な言い方をしているのではないか。 声は、十人十色で一人一人違います。澄んだ声、かすれた声、甲高い声などいろいろな声がありますが、どれも優しさ愛情あふれる声にはなるものです。子どもは、だれでも温かい愛情のある言葉を待っていると思います。 二つ目の「顔」ですが、私たちは、子どもが親しみを持ち安心していられる表情をしているかということです。いつも余裕のない緊張した厳しい顔ではないだろうか。子どもは教師や親の顔色を敏感に読み取り、不安になったり緊張したりします。いつもにこやかな穏やかな笑顔を子どもは望んでいると思います。 おしまいに「姿」ですが、子どもたちを良い意味で感化するような立ち居振る舞いができているでしょうか。見ていて気持ちのよい動作はあるものです。人が見ていないからといってぞんざいな振る舞いをしていないだろうか。それを意識して生活したいものです。声、顔、姿は、歌舞伎役者だけに重要ではなく、子どもを育てる上で私たちにも大切な意味があります。それは、私たち一人一人の心遣いと関係があります。声も、表情も、行動の現れもすべて、心の働きとして表に現れるものです。私たちもときどき立ち止まって、自分の受け答え、顔の表情、立ち居振る舞いが、子どもたちにどんな影響を与えているか日頃の心遣いと共に考えてみることが大切ではないかと思います。